伊豆の木で家を建てる会 (健康な暮らしと環境のための情報誌)
【山林が手入れされず荒廃している】
1.やすらぎをもたらす木の空間    2.学校でも見直される木
3.健康で安全な木造建築    4.木の家は地球温暖化を防ぐ
5.国内外の木材の現状と地球温暖化    6.国産材はすぐれている
7.屋内外の空気汚染の歴史    8.シックハウス症候群
9.地元の杉・桧を使った木と土の家に住む(天城の家)   10.国産材(杉・桧)と土で家を建てる!
11.国産材(杉・桧)で建てる家は高いのか?

家族の健康と環境に優しい住宅を建てるために知っておきたい知識!

 

8.シックハウス症候群

@ シックハウス症候群の主要症状
 中枢神経症状  頭痛・傾眠(眠気が支配する)・集中力欠如・不安・行動異常
 眩暈(めまい)・非刺激性の亢進(刺激に過敏な反応をする)
 眼症状  乾燥(眼球の乾燥、ドライ・アイ)・刺激感・流涙(涙目になる)・充血
 気道症状  鼻閉(鼻詰まり)・鼻汁・咽頭通(ノドの痛み)・嗄声(声がしゃがれる)
 感冒様症状(風邪の症状)・喘息(ノドがぜいぜい)・呼吸困難
 皮膚症状  掻痒(かゆみ)・発疹・乾燥
 全身症状  倦怠感・易疲労感(疲れやすくなる)
 *これらの症状が、特定の住環境にある極めて微量の化学物質によって引き起こされます。

A 室内の空気の質を損なう汚染源
 環境因子  汚染源
 化学的因子  二酸化炭素・一酸化炭素・窒素酸化物・二酸化硫黄・オゾン・塩素
 鉱物繊維・粒子状物質(ばい煙・タバコの煙)
 揮発性有機化合物(ホルムアルデヒド・有機溶剤・殺虫剤など)
 生物的因子  細菌(カビ・ウイルス・菌類・バクテリア)・原生動物(寄生虫)
 植物花粉・ダニ・虫・ラットやマウス・ペット(皮膚片・毛)
 物理的因子  高熱・ストレス・湿度(粘膜乾燥)・光・音(騒音)
 電磁波電離放射線(ラドン)


B 住宅のスタイルは南方開放型から北方密閉型へ

戦後、日本の住宅はアジア的モンスーン気候に適した「南方開放型」の家から、
ヨーロッパ的な「北方密閉型」の家へと大きく変わってきました。
その理由の一つは、自然と一体化できる大きな開口部をある家をつくろうと
思っても、受け入れるべき自然が住宅地から失われてしまったからだ。
いま、屋外にあるのは緑豊かな立木や涼風ではなく、隣家の壁、近隣の視線と
生活音、道路を走る車の騒音、振動、排ガスです。
日本の家はヨーロッパ並みに内側に閉じよう閉じようとしてきました。

昭和30年代の庶民の家は、戦前の和風住宅の面影を残し、
多くの家が和瓦を載せた在来工法の木造住宅で、大きめの開口部には
木製サッシが使われていました。
昭和40年代に入り、畳敷きの日本間が激減し、洋風化の一途をたどりました。
アルミサッシが普及し、新建材(化粧合板・ビニールクロス・ポリバスなど)が
新築市場へなだれ込みました。

日本の住宅は「開放型から密閉型へ」「天然素材から化学素材へ」
大きく舵を切りました。
昭和50年代に入り、住宅にも「省エネ」が叫ばれ断熱材が普及しました。
ツーバイフォー住宅も本格的に建てられるようになり、日本の住宅は
断熱化・気密化が進んでいきました。
和室に化学畳が標準仕様されるのもこのころです。

そして今、「健康住宅」が求められる一方で、日本の住宅はペアガラス窓の普及など、
高気密・高断熱の時代を迎えています。

自然通気性を比べてみると、昭和30年代以前の木製サッシを使った
在来木造住宅は、窓や戸を閉め切った状態で1時間に5〜6回も室内の空気が
自然に入れ替わる家でした。
昭和40年以後、洋風・壁工法のアルミサッシの家は1時間に1〜1.5回。
コンクリートのマンションではわずかに0.5回です。

現在、有毒ガスは逃げ場を失っています。

 

 

住宅内の空気を汚染する有毒化学物質とその影響

  建材・素材 代表的有害物質 人体などへの主な影響
接着剤 合板・木質繊維板
・パーティクルボード
・フローリングボード・断熱材
・ビニールクロス
・システムキッチン素材
・家具・ユリア(尿素)系
・メラミン系
・フェノール系合成樹脂製品
・接着剤原料など
ホルムアルデヒド
厚生労働省の
室内濃度指針
(室温25℃の場合)
0.08ppm
●ヒト吸入暴露における
  鼻咽頭粘膜への刺激
●0.4ppmで眼の刺激、0.5ppmでノドの炎症、
  3ppmで眼や鼻に刺激、4〜5ppmで涙眼
  呼吸器に不快感
  31ppmになると重篤な症状、
  104ppmあたりで死亡する
●「ヒトに対しておそらく発ガン性を示す」
  (WHO)
有機溶剤
(希釈材)
合板などの接着剤の溶剤
ビニールクロスなど内装材の
施工用接着剤の溶剤
家具の接着剤の溶剤
各種塗料の希釈液(うすめ液)
トルエン
指針値0.07ppm
キシレン
指針値0.20ppm
●トルエンヒト吸入暴露における
  神経行動機能、生殖発生への影響
●キシレン妊婦ラット吸入暴露における
  出生児の中枢神経系発達への影響
●高濃度の短期暴露で眼や気道に刺激
  神経錯乱、疲労、吐き気など
  中枢神経に影響も
  比較的高濃度の長期暴露で、
  頭痛、疲労、脱力感など
  心臓に不整脈も
エチルベンゼン
指針値0.88ppm

●マウス、ラット吸入暴露における
  肝臓及び腎臓への影響
●短期暴露でノドや眼に刺激
  数千ppmの高濃度になると、
  めまいや意識低下など中枢神経に影響
  長期接触で皮膚炎
灯油。塗料の溶剤 テトラデカン
指針値0.04ppm
●マウス実験では肝臓への影響
  高濃度では刺激性・麻酔作用が
  接触すると皮膚の乾燥、角質化、
  亀裂、長時間で皮膚炎
可塑剤 代表的な可塑剤
(加工のために素材を
やわらかくする調整剤)
ビニールクロスや塩ビ系の
建材、各種フィルム材、
電線の被覆材、塩ビパイプ、
各種家電製品など
多岐にわたる
染料、顔料、接着剤にも
フタル酸ジ-2-
エチルヘキシル
指針値7.6ppm
●雄ラット経口反復投与で精巣に
  病理組織学的影響
●高濃度の短期暴露で、眼.皮膚.気道に刺激
  消化管に影響も
  反復・長期の接触で皮膚炎も
フタル酸ジ-n-
ブチル

指針値0.02ppm
●母ラット経口暴露における新生児の
  生殖器の構造異常
●高濃度の短期暴露で、眼.皮膚.気道に刺激
  誤飲により吐き気.めまい、目の痛み、
  涙眼.結膜炎も
防虫剤
防蟻剤
防腐剤
防蟻処理剤・殺虫剤
畳の防虫シート
カーテンや壁紙の難燃剤
床ワックスなどにも
クロルピリホス
指針値0.07ppm
小児の場合
0.007ppm
ダイアジノン
指針値0.02ppm
●残効性のある有機リン系殺虫剤
●母ラット経口暴露における新生児の
  神経発達への影響
  及び新生児脳への形態学的影響
●有機リン化合物は基本的に
  サリンと類似の毒物
●軽症の中毒で、吐き気、倦怠感、
  違和感.めまい
  胸部圧迫感.軽度の運動失調
  唾液分泌過多.多量の発汗、下痢など
●重症の急性中毒になると、
  縮瞳、意識混濁、
  けいれんなどの神経障害を起こす
衣類の防虫剤。
トイレの芳香剤
パラジクロロ
ベンゼン

指針値0.04ppm
●80〜160ppmの高濃度になると
  大部分のヒトが眼や鼻に痛み、
  短期高濃度で眼.皮膚.気道に刺激
  肝臓・腎臓に機能低下、損傷も。
●マウス実験では発ガン性の報告もある
木材の防腐処理剤 クロム
・ヒ素化合物
●皮膚障害、胃腸障害ほか毒性がつよい
その他 断熱材・浴室ユニット
・化学畳・家具
・各種家電製品など
多くのプラスチック製品
・合成ゴム製品
スチレン
(モノマー)
指針値0.05ppm
●ラット吸入暴露における
  脳や肝臓への影響
●600ppmになると目や鼻に刺激、
  800ppmで眠気や脱力感
  高濃度の長期暴露で肺や
  中枢神経に影響、傾眠、めまいも
●「ヒトに対して発ガン性を示す可能性がある」
  (WHO)

※ 参考資料/厚生労働省「2001年・シックハウス問題に関する検討会中間報告」
「2000年・揮発性有機化合物(VOC)の指針値」「健康住宅研究会」資料
北里研究所病院臨床学センター・宮田幹夫論文「シックハウス対策」
(2002年積算資料ポケット版/経済調査会)
WHO「国際ガン研究機関の発ガン性分類」ほか
青文字は国が安全のため指針を示した化学物質
影響は個体差によって異なってくる